3分で読める決算書

「投資はしたい!けど決算書は読めない!」という人のために、決算書の概要を3分くらいで読めるようにまとめたブログです。グラフを使って直感的に理解できるように努めます。個人的な銘柄研究の忘備録も兼ねています。リクエスト募集中。

シベール(銘柄コード:2228)の決算書

どうもこんにちは。決算書マンです。

少しタイミングを逸した感があるのですが、先日「民事再生手続開始の申立て」を行ったシベール(銘柄コード:2228)を取り上げたいと思います。

今回のポイントは「それまでに火種はくすぶっていたのか?」です。 

大いに「後知恵バイアス」が働くかもしれませんが、とりあえず見てみましょう。

 

※なおPERや理論利回りに関しては、もうこの企業には投資することが出来ないので省略します。

※あと最近「PERとか理論利回りはあまり使え無さそう」という考え方に傾いてきているので、たぶん次の記事からそこらへんの内容を大幅に変えます。

 

 

★売上高

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※単位:千円

 

売上は徐々に減少していっています。

 

 

★営業利益

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※単位:千円

 

2016年をピークとして営業利益は崩壊しています。

 

 

★純利益

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※単位:千円

 純利益はもっと早く、2015年をピークに崩壊しています。

 

 

★売上高&営業利益&純利益

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※単位:千円

 

業績を見る限りでは衰退傾向です。

しかし、「業績が悪い=倒産」というワケではありません。

倒産は資金繰りに行き詰まった時に発生します。

業績が悪いと手元資金が少なくなるから資金繰りに行き詰まって倒産する、という流れなワケで、極端な話で言うと業績が良くても資金繰りに行き詰まれば倒産することになります。

 

 

★在庫回転日数

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※単位:日

 

在庫回転日数は遅くなっていますが、そこまでドラスティックな変化ではありません。

 

 

 

★売上高&在庫回転日数

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※左軸:売上高(千円) 右軸:在庫回転日数(日)

 

在庫回転日数と売上にはあまり相関関係は見られません。 

 

 

 

流動比率 

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今回の事件の大きな原因であろうことが、この流動比率の低さです。 

そもそも直近の5年間では100%を上回っていないのと、2018年にいたっては信じられないほどの低さになっています。

手元の資金繰りは非常に厳しかったようです。

 

 

 

自己資本比率 

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業績の下降に合わせて自己資本比率も下降しています。 

 

 

 

ROEROA

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赤字の年が多いのであまり意味がないです。


 

 

★営業CF 

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※単位:千円

 

2015年までは純利益に比べて潤沢にあった営業CFが2016年から急激にしぼんで行き、2018年にはマイナスに転じています。

なおのこと資金繰りは厳しいんですが、営業CFのマイナスは直近5年間だと2018年しかないので、何故そこまで資金繰りが厳しくなるのかは疑問です。

たいていの「資金繰りに行き詰まって倒産する企業」は数年間営業CFのマイナスが続いて体力が徐々に削られて行き、そしてパタっと倒れる場合が多いので、「単年の営業CFのマイナスでパタっと倒れる企業」というのは珍しいように思えます。

 

 

 

★実質投資CF(設備投資の売買+子会社の売買)

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※単位:千円

 

資金繰りが厳しくなった原因の一要素として、2016年から急激に増えた投資CFのマイナスが大きそうです。

さすがに2018年には抑制(というかプラスに)していますが。 

 

 

★実質FCF

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※単位:千円

 

直近3年間は当たり前のように自由資金がありません。

 

 

 

★設備投資比率

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2016年から設備投資に身の丈を超えたお金を使っていたようです。 

それまで全然設備投資にお金をかけていなかったのに、一体どうしたのか。

 


 

★来期会社予想

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※単位:千円 

 

 

おまけです。

来期の会社予想は売上高こそ減りますが、営業利益・純利益ともにプラスと会社は予想しています。

たらればの話にはなりますが、もし資金繰りに目途がついて生き残っていけたらば利益が出た可能性はあるワケです。

しかし銀行は会社予想を信用しなかった(もしくは与信枠一杯に借りてしまっていた)ので、お金を貸してくれず倒産ということになっています。

というのもここ1年間のうちにこの会社は「固定資産の減損(儲かると思って建てた設備が当初の想定より儲からなかったので、差額を損失として計上する会計処理)」による業績予想の大幅な下方修正を繰り返しており、決して会社予想の数値は信用に足るものではなかったのだと思います。

それでもわざわざ倒産させる必要はあったのか?

 

 

まとめると、

 

・業績は明らかな衰退傾向

・手元流動性はかなり厳しかった

・2016年~2017年にかけての身の丈を超えた設備投資が今になって影響してきた可能性が高い

・来期の予想は「黒字に回復」だったので助かる道はあったとは思うが、直近の度重なる業績の下方修正でイメージがかなり悪くなっていた可能性が高い

 

ということになります。

 

久しぶりのメジャーな会社の倒産でビックリしましたが、設備投資をしなければそれなりに利益は出ていたのではないかと思うので、「業績が悪くなり、資金繰りに行き詰まって倒産した」というより「ただ資金繰りに行き詰まって倒産した」という割とレアなケースなのではないかと思います。 

この会社よりもはるかに業績が悪い上場バイオベンチャーなどは山ほどあるのですが、それらとこの会社の違いは「手元流動性の多寡と、資金調達のし易さ」にあります。