武田薬品工業(銘柄コード:4502)
どうもこんにちは。決算書マンです。
海外の製薬大手のシャイアー(ティッカー:SHPG)の巨額買収を発表したのち、いろいろな物議を醸しだしている武田薬品工業(銘柄コード:4502)を取り上げたいと思います。
そして早速ですが、「株価とEV版株価」に関連する項目をけっこう大幅に修正したので、ご参考になれば幸いです。
なお修正したので、例のごとく全部読むのに5分くらいかかると思います。
それでは見てみましょう。
★売上高
※単位:百万円
売上高はデコボコしていますが、概ね1兆6千億円~1兆8千億円くらいで安定しているようです。
横ばいとも言う?
★営業利益
※単位:百万円
2015年のみ赤転していますが、それ以外の年度は安定して稼げているようです。
そして2018年にはジャンプアップしています。
買収関連で色々とごちゃごちゃしていますが、結局は一定の効果は出ているようです。
★純利益
※単位:百万円
純利益も営業利益と同じような推移をしています。
買収効果。
★売上高&営業利益&純利益
※単位:百万円
売上は横ばいですが、利益は上向き気味なようです。
今後の成長のためにM&Aを選択するのは理に適っている感じです。
★在庫回転日数
※単位:日
在庫回転日数は少し早くなっています。
★売上高&在庫回転日数
※左軸:売上高(百万円) 右軸:在庫回転日数(日)
売上横ばいで在庫回転日数が速くなっているのは良い感じです。
商売としてはあまり問題なさそうに見えます。
★流動比率
手元流動性は普通。
自己資本比率もいたって普通。
買収を繰り返していますが、財務基盤はそこまで悪くなっていないようです。
ROE・ROAはどちらかと言うと良くなっているようです。
★営業CF
※単位:百万円
2015年は純利益はマイナスですが、営業CFはキッチリと稼げています。
2016年はかなり微妙な数値ですが、それ以降に持ち直しているので経営自体は堅実そうです。
★実質投資CF(設備投資の売買+子会社の売買)
※単位:百万円
2017年のみドカンとお金を使っていますが、それ以外の年度はそれほどでもないようです。
★実質FCF
※単位:百万円
バラツキがあり過ぎて何とも言い難い・・・。
★設備投資比率
2016年は営業CFが例年よりも少なかったのでヘンテコな数値になっていますが、設備投資費の実額自体は例年通りなので、概ね営業CFのうち40%くらいを設備投資費に使っている感じです。
割とお金はかかっているようです。
★予想純利益
※単位:百万円
※2016年~2018年の営業利益平均成長率:37.13%
PERとEV版PERをやっていましたが、あまりにつまらない分析だったのと「成長を加味しないのはやっぱりおかしいんじゃないか?」と思ったので、早いですが項目を変更して成長率を加味したバリュエーション計算をやります。
ここでは来期予想純利益を1年目として、これまでの成長率が「3年間継続した場合」と「5年間継続した場合」のその時点での純利益を出しています。
つまりはこれまでの成長率が3年間継続したら3年後には純利益が488,682百万円(4,886億円)になっており、5年間継続した場合は5年後には純利益が918,975百万円(9,189億円)になっているということです。
ちなみに計算前提となる成長率はここでは「2016年~2018年の営業利益の成長率」としています。
本当は「2014年~2018年の営業利益の成長率」にしたかったのですが、2015年に突発的に営業赤字になって計算がややこしくなったので、今回は「2016年~2018年」の3年間にしてあります。
営業利益を採用した理由は「本業でいかに利益を出して成長しているか」の方がその企業の成長を表すのに適当だと思ったのと、純利益は一時的な利益や損失を含めてしまうので「企業の本質的な成長」を見ていくにはノイズが多過ぎると思ったからです。
★予想純利益に基づくPER
※「来期予想」は来期で純利益の成長がストップして、その後は横ばいで変化しない場合を仮定
※「成長率が3年間継続」は今後3年間は純利益が成長するが、その後は成長がストップして横ばいで変化しない場合を仮定
※「成長率が5年間継続」は今後5年間は成長するが、その後は成長がストップして横ばいで変化しない場合を仮定
※「利益を出し続けている限りは銀行や投資家はお金を貸し続けてくれる」という仮定で借入金の返済義務分は株価のバリュエーションに組み込まないこととする
そして上記の予想純利益に基づいてPERも計算してみました。
ちなみに「利益を出し続けている限りは借入金の借り換えが可能」という割と都合の良い仮定を置いているので、あくまで時価総額分のお金を出せばその企業を買えるということにして計算してあります。
今の成長が3年間続くのと考えるのか、5年間続くのと考えるのかでズイブンとバリュエーションに差が出てくることがわかります。
ちなみに企業価値分析ではDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)とかがありますが、それをやりだすと複雑過ぎて余計にワケがわからなくなると思うので、当ブログではそういった「時間価値」の計算は省きます。
★成長率を加味した理論利回り
※理論利回り(%)=1÷PER
そして最後に予想PERに基づいた理論利回りです。
「来期で純利益の成長がストップして横ばいになる」と考えるのであれば「年率6%くらい」の利回りを求めるのが現実的で、「純利益の成長が3年間継続する」と考えるのであれば「年率13%くらい」で「純利益の成長が5年間継続する」と考えるのであれば「年率16%くらい」ということになります。
もうここまで来ると個人の判断になるので何とも確定的なことは言えないですが、考えるポイントは「年間37%の高成長の継続性」です。
まとめると、
・売上は横ばい傾向
・利益は増加傾向
・財務基盤は普通
・経営は割と堅実そう
・設備投資費はそれなりにかかっている
・成長度合いにもよるが、利回りは「年率6%~16%」くらいを求めるのが現実的
ということになります。
いかがでしたでしょうか?
M&Aをしまくっている印象があったので財務基盤はもっとボロボロになっているかと思っていましたが、そこまで変化がなかったのは驚きました。
というかシャイアーの買収費用も約6兆円分の新株発行でまかなうそうなので、財務関係は割と上手くやりくりしているようです。
ただ既存株主にとっては「一種の増資」なのであんまり嬉しくないかもしれない・・・。
この巨額買収でシナジーが活きてくる結果となれば、「財務担当者はマジ有能」ということになります。