ソフトバンク・グループ(銘柄コード:9984)および、ソフトバンク(銘柄コード:9434)
どうもこんにちは。決算書マンです。
今日は最近何かと話題になっているソフトバンクを取り上げたいと思います。
そして今回から新たに「株価と業績との比較」の項目を追加しました。
ざっくり言うと「今の株価と業績だったら、理論的にはだいたいどれくらいのリターンが期待出来るのか?」ということを調べたものになります。
詳しくは項目の都度説明します。
そして本当はこの前上場した「ソフトバンク(銘柄コード:9434)」を単体で調べたかったのですが、過去のデータが足りなくて薄味になりそうだったので、「過去データ」は「ソフトバンク・グループ(銘柄コード:9984)」を調べて、「株価と業績との比較」は「ソフトバンク(銘柄コード:9434)」を調べたものになります。
というか「ソフトバンク(銘柄コード:9434)」は「株価と業績との比較」をする上で必要な通期の業績予想を出していたけど、「ソフトバンク・グループ(銘柄コード:9984)」の方は「未確定情報が多く、業績予想が困難なため、予想は出しません。」となっていたので今回のようなことに相成りました。
かなり乱暴な分析ですが、「ソフトバンク・グループ(銘柄コード:9984)」の利益の半分以上は「ソフトバンク(銘柄コード:9434)」による国内通信事業からもたらされていたので、だいたいの傾向はわかるのではないかと思います。
そして今回の記事に関しては追加の説明事項が多いので、3分じゃ読めないと思います。ご了承下さい。
では見ていきましょう。
まずは「ソフトバンク・グループ(銘柄コード:9984)」の決算情報からです。
売上高
※単位:百万円
2016年までは順調に伸びていましたが、それ以降は伸び悩んでいます。
営業利益
※単位:百万円
営業利益はアップダウンをしていますが、2018年にはレベルアップしているようです。
利益効率は上がっている模様。
純利益
※単位:百万円
純利益はよくわからないことになっていますが、2014~2016年の水準と2017~2018年の水準は大きな隔たりがあるようです。
売上高&営業利益&純利益
※単位:百万円
売上は横ばいで利益効率は若干改善しているようです。
在庫回転日数
※単位:日
在庫の回転はここ3年間はあまり変わっていません。
売上高&在庫回転日数
※左軸:売上高(百万円) 右軸:在庫回転日数(日)
売上高の変動と在庫回転日数の変動が割と一致しています。
商売は普通のペースで行えているようです。
けっこうギリギリの水準を保っています。
自己資本比率は徐々に改善されていますが、絶対値の水準は依然としてかなり低いです。
社債をバンバン発行しまくっているのが原因かと思われます。
2017年に一気にジャンプアップしましたが、翌年には戻っています。
利益効率はむしろ少し悪くなっている?
営業CF
※単位:百万円
2016年までは明らかに「営業CF>純利益」でしたが、それ以降は差がけっこう縮まっているようです。
ただちゃんと稼いでいることには変わりない。
実質投資CF(設備投資の売買+子会社の売買)
※単位:百万円
設備投資+会社買収にかなりのお金を使っていることがわかります。
スプリントとアームを買った影響が大きいと思います。
実質FCF
※単位:百万円
自由資金はほとんど残っていません。
設備投資比率
会社買収を除いても設備投資にかなりのお金を使っていることがわかります。
ビジネスの効率は決して良くない。
そしてそんなに設備投資が必要なのか。
↓以下からは「ソフトバンク(銘柄コード:9434)」の決算情報に基づいたものになります。
株価とEV版株価
単位:円
※株価は2019年1月4日前場引けの価格を使用
そしてここで新たな項目「株価と業績の比較」です。
まずは株価とEV版株価の比較を見ていきます。
株価は普通に株価なのですが、気になるのは「EV版株価」だと思うのでその説明をします。
とりあえずEVとは「Enterprise Value(企業価値)」の略称で計算式は
になります。
ざっくり言うと「返済義務がある借金も含めて、この企業を買収するにはどれくらいのお金が必要なのか」を表したものになります。
対して時価総額(=株価×発行済み株式総数)の方は「借金は除いて、この企業を買収するにはどれくらいのお金が必要なのか」を表したものになります。
そしてEV版株価の計算式は
EV版株価=株価+(一株あたり有利子負債ー一株あたり現金同等物)
となります。
要は株価との比較がしやすいようにEVを直しただけです。
とりあえずこの2つを比べてみると借金を含めると現状の株価の1.5倍くらいのお金が必要なようです。
PER
単位:倍
みなさんお馴染みであろうPERです。
いちおう計算式を説明をすると
PER=株価÷一株あたり純利益(EPS)
です。
要は「今の株価は利益の何倍で見積もられているのか」を表したものになります。
そして当ブログではPERを計算する分母となるEPSは、特に断りがない限りは
日本株に関しては「会社が公表している通期予想のEPS」を採用
外国株に関しては「アナリストが出している通期予想EPSの平均値」を採用
ということにします。
とりあえず普通の株価で言えば現状は予想純利益の16倍程度、EV版株価(株価+借金)で言えば予想純利益の23倍程度で見積もられているようです。
言い換えると「借金が今後ずっと借り換え可能だとしたら、予想純利益の16年分のお金を払えば買えますよ」となり、「借金が今後借り換え不可能でどこかの時点で返済しなければならないとしたら、予想純利益の23年分のお金を払えば買えますよ」となります。
いずれにせよそこまで安くはなさそう。
株価利回り
単位:%
そして最後になりますが、ここが追加項目の一番の肝です。
株価利回りは計算式自体は単純で、
株価利回り=1÷PER
となります。
この例で言えば要は「予想純利益の16年分または23年分のお金をかけてこの企業を買ったらそれ以降に挙がってくる純利益は全て自分のものになる。そうなると1年あたりどれくらいの利回りになるのか」を表したものになります。
つまりは「理論利回り」とも言い換えれます。
だいぶ単純化しているのと、成長は加味していないので実態を正確に表したものではないのですが、バフェットも「正確に計算して間違うよりも、大まかだが正しい方が良い」と言っているので、その言葉に従おうと思います。
というか大まかな指針としては個人的には悪くないのではと思っています。
そして解説すると、「借金が今後もずっと借り換え可能(=利益をあてこんで、銀行や投資家がお金を貸してくれる)」という前提であれば「年率6%くらいのリターン」を期待するのが妥当で、「借金が今後借り換え不可能(=銀行や投資家がお金を貸してくれなくなるタイミングが来る)」という前提であれば「年率4%くらいのリターン」を期待するのが妥当ということになります。
とは言え「じゃあ1年後に株価が4~6%くらい値上がりしているのか?」と聞かれれば「わからないし、短いスパンならばそうならない可能性が高い」と言うことしか出来ません。5~10年の長期スパンだと収束する可能性はありますが。
あくまで株価なので1年後に20%上昇していることもあれば20%下落していることもあります。
言いたいのは「ソフトバンクを買って1年後に資産が倍になる」ということは考えない方が良いということです。
あくまで現実的に考えた方が心理的には安定すると思いますし、心理的に安定していた方が投資は上手く行くと思います。
たぶん孫正義に「ソフトバンクを買って1年後に資産が倍になるか?」と聞いても「無理」と答えるでしょう。
まとめると、
・ソフトバンクグループ(9984)の業績は直近3年間は横ばい傾向
・利益効率も横ばい傾向
・借金は多め
・設備投資費はけっこうかかっている
・ソフトバンク(9434)への投資を現実的に考えるならば「年率4~6%くらいのリターン」を求めるのが妥当
ということになります。
いかがだったでしょうか?
「株価と業績の比較」をやろうと思ったのは、最近周りの「投資をしている人」を見回してみると「この企業の株価はこの前からこんだけ下がっているから買いだ!」とか「この企業の株価はこの前よりこんだけ下がっているから、今買ったら株価が倍になる!」とかを決算書を見ずにチャートだけ見て言っているいわゆる「夢見がちな人」があまりにも多かったからです。
その人たちの夢を壊そうなどとは思っていないのですが、夢を追い求め過ぎた結果けっこうな高確率でトータルで損失になっていて、あげくの果てに右往左往しているので、「お金をかける以上はせめて現実は直視した方がいいんじゃないか」と思い、この記事を書いた次第です。
それと私はグレアム・バフェット学派なので「いちおうこういう見方もあるよ」というのはある程度は提示出来るので、その一端を書くことで自分の頭の整理にもなるんじゃないかと思って書いています。
とりあえず、ソフトバンク・グループはもはや「投資ファンド」として有名になっているので、子会社の上場により資金調達して自己資本を充実させ、更に積極的に投資を推し進めていこうとしていることがありありとわかりました。